喧嘩最強男子の溺愛
郁人との楽しい夕食が終わり、時計を見ると8時からの夜の勉強会はすでに始まっていて、私と郁人は急いで英語の部屋に向かった。
私は後ろ側の扉をゆっくり開けて、皆に気付かれないようにそっと部屋に入ろうとしたんだけど、郁人が思い切りドアを開けてしまったから皆に一斉に見られてしまって。
追い打ちをかけるように奥原先生が、
「上野と島田は一番後ろの席で勉強しとけよー。クラスの邪魔はするな。あー、あとはイチャイチャするんじゃないぞ」
谷口さん以外の英語クラスの皆が奥原先生の言葉を聞いて大爆笑して。
やだ。変な汗が出る。私は顔を真っ赤にして俯いた。先生、皆の前で変なこと言わないでよ。
「なに照れてんの、帆乃香。真っ赤になって可愛いな。ははっ」
なんて、郁人まで私をからかう。そして小さい声で、
「先生、ナイス」なんて言ってるし。
私たちは一番後ろの席に座り、受け取ったプリントを始めた。
問題のほとんどを郁人に教わりながら、なんとか解答して。
「郁人、教え方上手だね。なんか英語が好きになったよ」
「ん? 英語が、なに?」
「好きになったよ」
「・・・・。」
なんで郁人は無言なの? しかも郁人の顔が赤いような気がする。
「どうしたの、郁人? あっ! 郁人じゃないや。島田くん」
「言い直してももう遅いよ。皆に名前呼びしてるのバレてるし」
「本当に? 恥ずかしい」
「もういいじゃん。俺と帆乃香の仲なんだからさ。誰に何を言われても気にすんな」
私と郁人の仲って。どんな関係だって言うの。
また誤解しそうになるよ、郁人。
やっと今日の勉強会が終了して、クラスが騒ぎ出した時、谷口さんが私と郁人の元へやってきて、
「島田くん、どうして英語クラスに来たの? しかも上野さんにずっと教えてて。さっきも夕飯はレストランに行ってたでしょ。2人は付き合ってるわけじゃないんだよね。どんな関係なの?」
さっき私が郁人とは付き合っていないって言ったのに、こうして郁人にくっついているから谷口さんはきっと嫌なんだね。
郁人が口を開く前に私が誤解を解かなきゃ。
「あの、谷口さん。島田くんに助けてもらっただけなの。私の英語力が無さ過ぎて、島田くんが見ていられなかっただけなの」
「ふーん、それは本当なの、島田くん」
「そうだな、見ていられなかったのは本当だよ。それが、何か?」
「それだけならいいの。島田くん、このあと少し時間もらえないかな? 話したいことがあるんだけど」
谷口さん、私がいるのに郁人のことを誘うんだ。
私、ここにいたら邪魔者だね。
「えっと、私、部屋に戻るね。おやすみなさい」
「えっ、ちょっと待てよ、帆乃香」
郁人が私を引き留めようとしたけど、私は「ごめん、疲れたから」って言って郁人と谷口さんを避けるように自分の部屋へ戻った。