喧嘩最強男子の溺愛
部屋に一人でいると、あの2人のことが気になってしょうがない。
谷口さんが郁人に告白して、郁人が受け入れてしまったら、どうしよう。
有希に相談しようかな。話を聞いてもらいたいな。
有希の部屋は何号室なんだろう。メールしてみよう。まだ起きてるよね?
私はスマホを取り出そうとしてカバンを探す。あれ? スマホが無い。
どうしたっけ、私のスマホ。
あっ! 朝、奥原先生に預けたまま返してもらってないや!
先生の部屋とか知らないし。スマホ返してもらいたい。
フロントに行って先生を呼び出してもらおう。
私は急いでフロントまで下りて、奥原先生の部屋へ内線を繋いでもらった。
「先生、上野です。私のスマホ、ありませんか? 返してもらうの忘れてて」
先生は携帯ボックスを見てくるから、ロビーで待つように言ってくれて。
ロビーまで降りて、そこにある豪華なソファーに座ってみるとすっごくフカフカで、体が沈む。
すごーい、高級感のあるソファーだぁ。気持ちいいな。
私が先生を待つ間、ソファーに寝転んでその高級感に浸っていると、私の座っているソファーの背中側にある大きな柱の陰で郁人と谷口さんが立ち話をしていることに気が付いた。
ロビーが静かだから2人の話し声が聞こえてきて、時々2人の笑う声も聞こえてくるから、私の体が固まって動けない。
そこにタイミング悪く奥原先生が私のスマホを持ってやってきた。
ああ、先生。
そんなお風呂上がりの洗った髪をセットしていない、いつものキッチリした格好じゃない姿で来るなんて。
まるでその辺の大学生みたい。
「おーい! スマホあったぞ」
私は思わず先生に向かって人差し指を口に当てて「シーッ」てポーズをして、先生の手を引っ張り私の隣に座らせた。
私と奥原先生はソファーに深く座り、郁人たちから見えないようにソファーの背もたれに隠れる。
先生が何かを察したのか、小さい声で
「どうした、上野? 何隠れているんだ?」
「どうしよう先生、ここから動けなくなっちゃった」
私は動けなくなった理由を指さして先生に教えた。
先生が後ろを振り返り、あの2人を確認するとまたソファーに深く座って身を隠した。
「何やってんだよ、上野。なんで島田が谷口と一緒にいるんだ?」
「谷口さんが郁人を呼び出してたの。あの2人、仲良く話してるからここから帰れないよ、先生」
「そうか、モテるヤツが彼氏だと大変だな」
「郁人は彼氏じゃないよ、先生」
「じゃ、なんでここから移動できないんだよ。島田と付き合ってる訳じゃないなら堂々と出ていけばいいだろう」
そう言いながら奥原先生が笑っていて。
「先生のバカ! 出ていけないよ。あんなに仲良く話してるのに。泣くからね。泣きたい・・・」
「おい、上野! 泣くなって。俺が誤解されるだろ!」
「先生、静かにしてって。郁人たちに気付かれちゃうよ」
「じゃ、どーすんだよ」
奥原先生、話し方まで大学生になってるから。
先生を静かにさせた途端、郁人たちの話し声が私と先生の耳に急に飛び込んできた。
「上野さんと付き合っていないなら、私と付き合ってほしい。島田くんのこと、好きなの」
私と奥原先生の耳に入って来たのは谷口さんの告白だった。