喧嘩最強男子の溺愛
「うん、わかったよ郁人。確かに谷口さんのことは気になっていたから、教えてくれてありがとう」
「良かったー。帆乃香に誤解されたかと思ってさ。今日話せて良かったよ」
「誤解ってなに? もし郁人と谷口さんが付き合うことになったとしても、私は何も言うことないよ」
「帆乃香、本当にそうなの? 俺が誰かと付き合ってもいいの?」
「だって。郁人と私って別に付き合ってる訳じゃないもん。さっきは郁人の側にいたいって言ったけどさ。もし郁人に好きな人がいたら、私が郁人の側にいてはだめでしょう?」
「言ったよね。俺の側にいたいならずっといればいいだろ」
「それは、友達としてでしょ? ううん、私が海人くんの友達だからでしょ」
「海人は関係ないだろ。俺と帆乃香の話しをしてんの」
「だって郁人が私に優しくしてくれるのは、私が海人くんの友達だからだって言ったよね」
「まだそう思ってる? 俺の態度って帆乃香に対して分かりやすくないか?」
「分かりにくい。いつもいつも私が勝手に誤解してる。郁人の発言に私だけがドキドキしてる。郁人が優しくしてくれるたびに、苦しくなって泣きたくなるの」
「どうして俺が帆乃香に優しくするのか、分からない? 俺は好きな子にしか優しくしない」
「うん、さっき聞いた。他の人に優しくすると郁人の好きな子が泣くんでしょ? だから郁人は好きな子にしか優しくしないって。あれ? じゃあどうして私に優しくするの・・・」
「ん? 帆乃香、ちょっと待って。その話、どこで聞いた?」
「えっ? さっき・・・あっ!!」
ヤバイ! つい口走っちゃった。慌てて自分の口を手で押さえたけど、もう遅い。
どうしよう、谷口さんとの会話を盗み聞ぎしてましたって、バラしちゃった。
「帆乃香、いつからここにいたの?」
「えっと・・・・結構前からいた、かなぁ?」
「俺と谷口さんの話、聞こえてたの?」
「ごめんなさい! 2人が居るの気付かなくて。でも、最初から聞いていたわけじゃないよ」
「ふーん。じゃ、俺が片想いしてる人がいるとか、聞いてたんだ」
「本当にごめんなさい。ワザとじゃなかったの」
「で、俺に好きな子がいるって聞いて帆乃香はどう思ったの?」
もう逃げられない。私の気持ち、正直に郁人に伝えるしかない。
たとえ谷口さんと同じ結果になったとしても。
私は話し出す前に深く深呼吸をした。