喧嘩最強男子の溺愛
◎ 第十四章 郁人の家で
勉強合宿が終わると大学受験組は本格的に受験勉強に取り掛かる。
郁人も大学進学するって言っているから勉強時間を増やしているみたいで。
せっかくお付き合いするようになったのに、なかなか会えないの。
しかも今は夏休み・・・。
高校を卒業したら就職して働きながら花嫁修業をしようと思っている私はなんとなくクラスでも浮いた存在だから、どうしても私から遊びのお誘いをするのは気が引けてしまって。
夏休み前半はずっと家にいることが多かった。
夏休み中のイベントに8月中旬に開催される花火大会があって、去年までは有希たちと出掛けたけど今年は有希も彼氏と行くだろうし、私はどうしようかな。
郁人と一緒に行きたい。でも、誘っても大丈夫なのかな。
彼女になったのにいまだに郁人に遠慮してしまうところがあって、どうしても受け身になってしまう。
毎日郁人からメールや電話を貰うけど、花火大会へのお誘いは一言もなくって。
私から誘ったら一緒に行ってくれるかな?
今日こそ誘ってみようかなって考えている所へ郁人からの着信が来て、ドキッとした。
『もしもし、帆乃香? 俺。今何してたの?』
郁人からの第一声はいつもこの質問。
「何もしてないよ。暑いから家でゴロゴロしてたの。郁人は何してたの?」
『俺は勉強したり、海人の相手したり。外は暑いからな、海人も外では遊ばないんだよ。ずっと家にいるから相手してやるのが大変でさ』
「ふふっ、そうなんだね。私暇だから海人くんと遊んであげれるのにね」
『じゃ帆乃香さ、遊びに来ない?』
「えっ? どこに?」
『俺んち。自宅の方なんだけど。親父は仕事してるから俺と海人しかいないし。おいでよ』
「うん! 行きたい!! 行ってもいいの?」
『よし、決まりな。じゃ帆乃香のところの駅まで1時間後に迎えに行くから、出てこれる?』
「ありがとう。1時間後にね」
やったー! 郁人と会えるんだ。
何日ぶりだろう。
それにしても自宅にお邪魔するの初めてだから、少し緊張するな。
少し早く出ておやつを買っていこう。海人くんと何して遊ぼうかな。
私は少し早めに家を出て、駅前のお店でアイスケーキを買った。
アイスが溶けないようにドライアイスをたくさん入れてもらって。
約束の時間よりも早く郁人と海人くんが駅まで来てくれて、海人くんが私の所へ駆けてきてくれた。
「帆乃香、今から僕んちに来るんでしょ? 僕が帰るまで待っててよ。絶対に帰らないでね」
「あれ? 海人くんも一緒に帰るんじゃないの?」
「僕はこれから空手道場なの。終わったらすぐ帰るね。じゃ、また後でね帆乃香」
海人くんは私と郁人に手を振って、そのまま空手を習いに行ってしまった。
「あれ? 海人くん行っちゃったよ。私、海人くんの遊び相手なんじゃなかったっけ?」
「海人が帰ってくるまでは俺の相手をしてよ。毎日会ってる訳じゃないんだからさ。さ、行こう」
「えっと、郁人。確認だけど、おうちには誰もいないってことかな?」
「そうだけど。何、帆乃香。変なこと考えてない?」
「そっ、そんなこと考えてないけど。でも緊張しちゃう」
だって、海人くんがいると思っていたから遊びに行こうと思ったのに。
郁人と二人きりで郁人の家で過ごすなんて私にはハードルが高いよ。
「ほら、行くよ。はい」
郁人は「はい」って言いながら手を差し出して、私と手を繋いでくれる。