喧嘩最強男子の溺愛
◎ 第十五章 花火大会

今日は郁人と海人くんと約束している花火大会。

昨日お母さんに頼んで新しい浴衣を買ってもらった。

着付けと髪を結うのはお母さんの得意な分野だからお母さんに頼んで。

完璧に仕上がった自分を鏡で見て、

「これなら郁人の隣を歩いても恥ずかしくないよね」

って呟いたのをお母さんが聞き逃さなくて。

「あら、帆乃香。誰と行くの? 前に家まで送ってくれた人?」

「うん。島田郁人くんっていうの。同じクラスの人でね、実はお付き合いしてるの。郁人の弟の海人くんも一緒でね。3人で行くんだよ」

「お母さん一度しか見てないけど、かっこいい彼氏だったわよね。良かったわね、帆乃香」

「うん。自慢の彼氏だよ。とても優しくて、それでとても強いんだよ。これからお迎えに来てくれるから、お母さんに紹介してもいい?」

「もちろんよ。楽しみにしてるわね」

急にお母さんを紹介したら、きっと郁人びっくりしちゃうから先にメールで教えておかなきゃ。

そう思って郁人にメールを打ち始めたら、お母さんが呼んだからメールを打つ手を止めて、お母さんの話を聞いた。

「帆乃香、竜也さんとの再婚のことだけど。10月に籍を入れることにしたの。入籍したらお母さんは夜の仕事を辞めるからね。ずっと帆乃香には我慢させてしまってごめんなさいね。もう帆乃香は自由にしていいのよ。竜也さんもお店の方はなるべく店長に任せて、お母さんと過ごす時間を増やしてくれるって言ってるの」

「竜也さんと結婚したらこの家に住むんでしょ? 私、邪魔だよね?」

「なに言ってるの帆乃香。邪魔な訳ないでしょ。そんな寂しいこと言わないで」

「うん。それでも私なりに考えてるんだけどさ。郁人のお父さんが賃貸マンションを持っていてね。そのマンションが駅前にあるビルなの。そこに引っ越すのって、ダメかな? ここからも近いし。いつでも会える距離だし。アルバイトもするから、ダメ?」

「お金の心配はしなくてもいいのよ。でも、まだ高校生でしょ。女の子の一人暮らしは賛成できないな。竜也さんとも相談してみるけど、帆乃香はそうしたいのね?」

「うん。できるならそうしたい。同じビルの1階と2階に郁人のお父さんの会社もあるし、安全なの。竜也さんに聞いてね。お願いね」

私はお母さんにやっと郁人のこと、一人暮らしを考えていることを話すことができた。

家を出て賃貸マンションに住めるかどうかは竜也さんに聞いてからの返事になるけど、一歩前進したかな。

あっ、お母さんを紹介したいって郁人にメールしなきゃ。

メールを送信した瞬間、郁人と海人くんが約束の時間より少し早く私の家まで迎えに来てくれて。

郁人、私のメールはもちろん読んでないよね‥・。

私は玄関まで行き、2人を出迎えた。

「郁人に海人くん、早かったね。迎えに来てくれてありがとう」

「うわ! 帆乃香、浴衣なんだ。新鮮だな・・・かわいいよ」

郁人が私を見て照れながら褒めてくれた。

「ありがとう、そう言ってくれて嬉しい」

私の後ろからお母さんが顔を覗かせて、

「帆乃香の母です。いつも帆乃香がお世話になります」

「あっ、ご挨拶が遅れました、島田郁人と申します。こちらこそいつも帆乃香さんにお世話になってます。こっちは弟の海人です。小学3年になります」

「島田海人です。こんばんは。帆乃香のお母さん?」

郁人と海人くんが丁寧に挨拶を返してくれた。

「まぁ、まだ小さいのにちゃんとご挨拶できて凄いね、海人くん」

「まあね。いつも道場で礼儀作法やってるからね。ね、帆乃香のお母さんなの?」

「そうよ。帆乃香と似ているでしょ?」

「うん。似てるね。帆乃香ね、郁人と結婚して僕が帆乃香の弟になるんだよ、約束したんだ」

「やだ、海人くん。そんなことお母さんに言わないの!」

郁人も海人くんの口を塞いでこれ以上喋らせないようにした。

「海人が変なこと言ってすみません」

郁人がお母さんに謝りながら頭を下げた。

「あら、いいじゃないの。若くて結婚するのもいいと思うわよ。帆乃香には早めに花嫁修業させるから、お嫁さんにしてあげてね、郁人くん」

「はい。もちろんです。俺にはもったいないくらいです。帆乃香に飽きられないように頑張りますから、よろしくお願いします」

なんなの、お母さんも郁人も。結婚なんてまだ先の話じゃない。

「もう花火大会に行こうよ。お母さん、行ってきます」

私はこれ以上郁人とお母さんの話が盛り上がらないように話を遮った。

「あら、そうね。もう時間だわね。気を付けて行ってらっしゃい。帆乃香をよろしくお願いします」

「はい。では行ってきます」

お母さんと別れて、今夜も海人くんを真ん中にして3人で手を繋いで花火大会の会場へ向かう。

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