喧嘩最強男子の溺愛
やだ! 本当に遅刻しちゃう! まだクラスも分からないのに。
どの教室に入っていいか確認しなきゃ!
学校へ着くと、もう玄関には誰もいなくて。
私は玄関に張り出されているクラス表を1組から順に見て行く。
最後のクラスまで見終わって、無い! 私の名前、どこ??
えっ? まさかの留年?
なんか、心細くなって涙が滲んできた。も一回、1組から見返さなきゃ。
焦ってるから自分の名前が探せない・・・。
もう、泣きたい。
すると後ろから、
「ねぇ、そこ2年のクラス表だけど?」
えっ? 2年生の?
「そっか! 下駄箱の位置も変わったんだ! ありがとう」
じゃ、3年はあっちか。また1組から名前探さなきゃ。
「上野帆乃香は3組だよ。早く行くぞ」
「えっ? 誰? なんで私のクラス、知ってるの?」
驚いてその人に問いかけた瞬間、名前が見つけられなくて泣きそうだった目から本当に涙が零れた。
「やっ、やだ。なんで、涙?」
「もう! 何やってんだよ。おまえの靴はここに入れる。早く上履きに履き替えて」
「は、はい」
「履き替えたら、クラスまでダッシュする!」
「は、はい」
その人はもたもたしている私の手を取って、3組まで走った。
私は、はぁはぁ言いながらその人について行く。
走りながら、助けてくれている男の人の後ろ姿を見た。
背が高くて髪の色は染めていない黒。そして柑橘系の爽やかな香りがした。
初対面なのになんて親切な人なんだろう。
はっと気づくと手を握られてる!! あわわわっ。男の人と手を繋いでる?
高校3年生にもなって彼氏もできたことにない私に衝撃的な出来事が今起きている。
「あの、手! 手をはな・・・」
手を離してって言いたかったのに、この人は私の言葉に被せてきた。
「お前がのろいからだろ。いいから黙って走れ!」
言葉は乱暴だけど怖い言い方ではなくて。仕方なく私はこの人に従った。
「は、はい」
この男の人のおかげで始業時間ギリギリ間に合った。
良かったぁ。初日から遅刻なんてありえなかった。
「あっ、ありがとう。助かりました」
そうお礼を言ったら、その人が、
「別に、いい」
と言いながら掴んでいた私の手を離して、3組の中へ入って行った。
同じクラスの人なんだ。親切な人がいるんだな。
あっ、友達は? 皆と同じクラスになれたの?
一通りクラスを見回す。
「帆乃香!! 同クラだよーーー」
「有希! やったぁー」
2年生の時に仲良しグループだった有希が同じクラスにいたことが分かって嬉しくて。
私が有希のところへ行こうとした時に、担任がクラスに入ってきてしまった。
仕方なく席に着かなければならないから、有希とは後で話そう。
席に着くにもまだ自分の席がどこなのか確認していなかったことに気付いた。
クラス全員が着席しているので嫌でも立っている私が目立ってしまう。
ん? 私の席はどこ?
私、上野だからきっと窓側の前の方かな?
窓側の列を見ても空席がない。あれ? 何順に座ってるの?
空いてる席? んーーーっと。席が見つからずに困っている私を見かねたのか
「ここだよ、お前の席」
そう言って教えてくれたのは、さっき助けてくれた人。
あっ、この人の隣なんだ。私はその席に座り、再度その人に
「何度もありがとう」
とお礼をした。
隣の席のその人は私に向かって
「ドンくさっ」
小さい声で私にそう言うと、私の席とは反対側を向いてしまった。