そのサキュバスは夢を見る

『サキュバスのナンネ』

私は人を愛したことがない。

人間と異人族が暮らすこの国の片隅で身を売る一人の人間、私は『サキュバスのナンネ』。

サキュバスとは女性姿の『夢魔』と言われる魔族で、男性姿のインキュバス同様、夢で相手を誘惑するために相手を魅了する姿で現れるという。

私は人間だけれど、遠国にいるというサキュバスのように、演技でお客様の望んだ雰囲気に変え、そのお客様の望む相手になりきって逢瀬を迎える。

相手から相手へ移り夢に現れるというサキュバスは、人を愛すことはないという。

他に生きる場所を無くしてから、私はずっとそうしてきた。

化粧をして少し着飾った、夜にだけ現れる、逢瀬の相手を求める娘。
それが私。



今日も私にお客様がやってきた。

「『サキュバスのナンネ』、会いたかったよ。お前は私に、どんな夢を見せるんだ?」

狼のおじ様。
スーツを着こなした紳士。それでも彼は、私を求めてやって来たお客様…


連れて行かれた宿で私は雰囲気を作り、それらしく自然に『台詞』を紡ぎ出す。
当たり障りなく、なるべく自然に、探りながら。

「『…おじ様…私を食べてしまうのね…。』」

少しだけ怯えて雰囲気を出し、相手の様子を見る。

私に来るお客様は大抵知っている。
自分に合わせて私が相手をする事を。

「そうさナンネ…お前を喰らうために探し出したんだからな…」

「『そんな…怖いです……』」

おじ様は私の怯えるその姿に、ニヤリと笑い、雰囲気に乗ってくる。

「お前はもう、私のものなんだ。逃がすわけはないだろう…!?」

おじ様は息を荒くしたまま私にのしかかる。
私は少々嫌がる素振りを見せるけれど抵抗はしない。

私はなされるがまま服をはだけられた。

「愛らしい、美味そうなナンネ…!!私も紳士ではいられなくなってしまうよ…!!」

「『おじ様…!!』」

この人も今宵私を求めるだけ……

「『あ、や…あぁぁん…!!』」

洗われて清められた身体中に舌を這わされ、申し訳程度に舌でほぐされた私のそこからはまた蜜が滴り落ちる。

相手を満足させる為だけに覚えた、悲しい身体の習性…

いきなり後ろを向かされ、後ろから突き上げて激しく揺さぶられる。

人間とは違う、激しい獣の吐息。
律動はさらに速度を増す。

「『っ、あっっ…!!あぁっ、あっ、あっ…!!』」

「ああ!お前の身体も、私に奪われたがっているようだよ!」

「『あぁ、そんな…!!あぁぁぁぁ!!』」

私の一夜の演技は続く。

どんなに嫌な相手でも、どんな嫌な事をされても耐え続けなければ…
満足をしてもらわなければ、私が今宵連れ込まれたこの宿代も、食事代も無い…
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