そのサキュバスは夢を見る
傷だらけの身体を
面も着けず着飾りもしない私をティト様は全く気にした様子もなく、私の腕に自らの腕をそっと絡めて歩き出した。
ティト様はその後も今までと変わらず私に優しく接してくれ、すぐに見つけた屋台でともに軽食を摂り、そして宿に着いた。
「ナンネ…会いたかったよ…!!」
ティト様は部屋に着くなり私を抱き締める。
「っ…!!」
自分では今まで気付かなかった突然のあざの痛みに、私は思わず顔をしかめてしまった。
…そうだった。私の身体は今あざだらけ…
嫌われてしまうだろうか…優しいティト様にすら…
しかしティト様は私の服から見え隠れする腕や足のあざに気付き、私の腕のあざを優しくさすった。
「アイツ…俺のナンネを傷付けるなんて…!!」
悔しそうに顔を歪ませるティト様。
「えっ??」
今初めてこのあざを見たとは思えないほど自然にティト様はそう言った。
確かにあざを付けられたのは、昨晩相手をしてもらったお客様。
ティト様にはすぐにそれが分かったのだろう。
するとすぐ私は、ティト様は今宵、そのような設定で私との逢瀬を過ごすのが望みなのだと思った。
大切な人を無理やり奪われたティト様として…
「『ティト様…とても辛かったです…。私には貴方がいるというのに…』」
私は彼に合わせるように台詞を紡ぐ。
「俺は自分が許せないよ…大切なナンネをこんな目に合わせてしまったなんて…!痛かったでしょ、ナンネ……。辛かったよね…悲しかったよね……」
演技とは思えないほど真剣で悲しげなティト様の雰囲気に、私は必死に気を落ち着かせようとティト様に抱きついた。
それなのに、私から出てきたのは本物の涙だった。
「っ…ティ…ト…さ……」
台詞すらももう出ては来ず、私はティト様に強くしがみついたまま泣いた。
「わあぁぁぁ…!!」
もう言葉も出ては来ない。
思い出しただけで苦しくなる、自分勝手なお客様とのあの一夜。
今まで誰かにそばにいてもらうため、私が生きていくため、何度そんな夜を迎えたか分からない。
それなのに、最中にティト様を思い出す度、優しくしてくれるティト様に甘えてしまいたくなった。
一晩耐えたけれど、そのおかげであの乱暴なお客様との一夜は異常なものだったのだと思い知らされてしまった。
いつも私を気にかけてくれるダリアにも何も言えずに町を彷徨い、とうとうタガが外れてしまったらしい。
小さな子どものように泣き続ける私をベッドに横向きに寝かせ、ティト様は私の前に向かい合わせて寝そべり、私をそっと抱き締め続けてくれる。
私はあろうことかそのまま眠りに落ちてしまった。
ティト様はその後も今までと変わらず私に優しく接してくれ、すぐに見つけた屋台でともに軽食を摂り、そして宿に着いた。
「ナンネ…会いたかったよ…!!」
ティト様は部屋に着くなり私を抱き締める。
「っ…!!」
自分では今まで気付かなかった突然のあざの痛みに、私は思わず顔をしかめてしまった。
…そうだった。私の身体は今あざだらけ…
嫌われてしまうだろうか…優しいティト様にすら…
しかしティト様は私の服から見え隠れする腕や足のあざに気付き、私の腕のあざを優しくさすった。
「アイツ…俺のナンネを傷付けるなんて…!!」
悔しそうに顔を歪ませるティト様。
「えっ??」
今初めてこのあざを見たとは思えないほど自然にティト様はそう言った。
確かにあざを付けられたのは、昨晩相手をしてもらったお客様。
ティト様にはすぐにそれが分かったのだろう。
するとすぐ私は、ティト様は今宵、そのような設定で私との逢瀬を過ごすのが望みなのだと思った。
大切な人を無理やり奪われたティト様として…
「『ティト様…とても辛かったです…。私には貴方がいるというのに…』」
私は彼に合わせるように台詞を紡ぐ。
「俺は自分が許せないよ…大切なナンネをこんな目に合わせてしまったなんて…!痛かったでしょ、ナンネ……。辛かったよね…悲しかったよね……」
演技とは思えないほど真剣で悲しげなティト様の雰囲気に、私は必死に気を落ち着かせようとティト様に抱きついた。
それなのに、私から出てきたのは本物の涙だった。
「っ…ティ…ト…さ……」
台詞すらももう出ては来ず、私はティト様に強くしがみついたまま泣いた。
「わあぁぁぁ…!!」
もう言葉も出ては来ない。
思い出しただけで苦しくなる、自分勝手なお客様とのあの一夜。
今まで誰かにそばにいてもらうため、私が生きていくため、何度そんな夜を迎えたか分からない。
それなのに、最中にティト様を思い出す度、優しくしてくれるティト様に甘えてしまいたくなった。
一晩耐えたけれど、そのおかげであの乱暴なお客様との一夜は異常なものだったのだと思い知らされてしまった。
いつも私を気にかけてくれるダリアにも何も言えずに町を彷徨い、とうとうタガが外れてしまったらしい。
小さな子どものように泣き続ける私をベッドに横向きに寝かせ、ティト様は私の前に向かい合わせて寝そべり、私をそっと抱き締め続けてくれる。
私はあろうことかそのまま眠りに落ちてしまった。