そのサキュバスは夢を見る
エピローグ
「悪魔の姿のとき、怖がらせてごめん、ナンネ…」
「っ…いいえ…あの悪魔は、私にとても優しい気遣いをしてくれました…。ティトの優しい心が、伝わってきたおかげだった…本当に、あのときはありがとうございました…!」
私は彼を見つめた。
自分の気持ちを言葉にするのは苦手だけれど、ティトに伝わって欲しいと心から願いながら。
「…ティト…私、貴方以外の方との逢瀬はもう、したくはありません……こんなに穢れて、こんなに傷だらけになって…私に何も取り柄はないけれど……」
ティトは私の言葉に優しく笑み、首を振る。
「ナンネは綺麗だよ。俺はナンネが大好きだから、ナンネといられて嬉しい!それにね、魔力も無く相手に合わせられるのは、相手のことを懸命に考えてあげられる証拠だと思うんだ。ナンネは一生懸命だし優しいよ。」
ティトは真剣な眼差しでまっすぐに私を見つめた。
「俺も今までの生き方に疑問を持って、国を出てきたんだ。」
初めて知ったティトの経緯。
ティトは、夢魔は他人から他人を渡り、その時の相手と夜をともにして生きるものだと言われて生きてきたそう。
「でもある日、そうじゃないかもしれないと思ったんだ。別の生き方を探して国を出て、ナンネと出逢って、本当にそんなことはないんだと思ったよ。」
夢魔は他人を愛せないと思っていた私は、ティトの言葉を聞いてとても嬉しかった。
「君に出逢えて良かった…!俺も、ナンネ以外はいらないよ。ナンネが受け入れてくれるなら、俺は生きていける。昼間は霧の姿でしかいられないけど、ナンネが望む限りそばにいるから…」
「ティト…はい…!いてください…!」
私は再びティトの腕の中に包まれた。
それを喜んで私は受け入れる。
「ティト…私も、貴方に出逢えて本当に幸せです…!どうか生涯、私のそばに…」
こうでなければいけないなんて、そんなことは無いのかもしれない。
『サキュバス』だった私は人間に戻れてティトを愛し、ティトはインキュバスでも国を出て私を愛してくれた。
私を導いてくれたダリアとティトに…私が愛するこのふたりとの出逢いに、
私は心からの感謝を……
………
ダリアは明け方、店の中で隣の救護室からナンネの微かな寝息が聞こえるのを確認した。
ダリアからは見えないが、部屋ではベッドに眠るナンネと、そばの椅子で寄り添い眠るティト。
「…インキュバスと『サキュバス』が夢の中でひとときを過ごす、なんて…なんだかロマンチックよね。まったく、仲が良いんだから…。ナンネが嬉しそうで本当に良かったわよ。私もあんたが大好きだから…。…異種族、か…私も一度、人間とでも恋に落ちてみたいものね。」
ダリアはそう言って小さく笑う。
そして呟いた。
「ねえナンネ…『サキュバス』はもういいでしょう?良い人が出来たんだしさ…私の店で、働いてみない?…なんて、誘ってもいい…??生きるのも一生懸命なあんたならさ、きっと人種も異種族も関係なくお客さんに好かれて、この店ももっとうまくいくと思うの。…私だってあんたが好き、もう無理をして苦しんでほしくないのよ…?…私、今日こそナンネに言うんだから…」
それぞれの想いをのせ、今日も夜は明けていく…
「っ…いいえ…あの悪魔は、私にとても優しい気遣いをしてくれました…。ティトの優しい心が、伝わってきたおかげだった…本当に、あのときはありがとうございました…!」
私は彼を見つめた。
自分の気持ちを言葉にするのは苦手だけれど、ティトに伝わって欲しいと心から願いながら。
「…ティト…私、貴方以外の方との逢瀬はもう、したくはありません……こんなに穢れて、こんなに傷だらけになって…私に何も取り柄はないけれど……」
ティトは私の言葉に優しく笑み、首を振る。
「ナンネは綺麗だよ。俺はナンネが大好きだから、ナンネといられて嬉しい!それにね、魔力も無く相手に合わせられるのは、相手のことを懸命に考えてあげられる証拠だと思うんだ。ナンネは一生懸命だし優しいよ。」
ティトは真剣な眼差しでまっすぐに私を見つめた。
「俺も今までの生き方に疑問を持って、国を出てきたんだ。」
初めて知ったティトの経緯。
ティトは、夢魔は他人から他人を渡り、その時の相手と夜をともにして生きるものだと言われて生きてきたそう。
「でもある日、そうじゃないかもしれないと思ったんだ。別の生き方を探して国を出て、ナンネと出逢って、本当にそんなことはないんだと思ったよ。」
夢魔は他人を愛せないと思っていた私は、ティトの言葉を聞いてとても嬉しかった。
「君に出逢えて良かった…!俺も、ナンネ以外はいらないよ。ナンネが受け入れてくれるなら、俺は生きていける。昼間は霧の姿でしかいられないけど、ナンネが望む限りそばにいるから…」
「ティト…はい…!いてください…!」
私は再びティトの腕の中に包まれた。
それを喜んで私は受け入れる。
「ティト…私も、貴方に出逢えて本当に幸せです…!どうか生涯、私のそばに…」
こうでなければいけないなんて、そんなことは無いのかもしれない。
『サキュバス』だった私は人間に戻れてティトを愛し、ティトはインキュバスでも国を出て私を愛してくれた。
私を導いてくれたダリアとティトに…私が愛するこのふたりとの出逢いに、
私は心からの感謝を……
………
ダリアは明け方、店の中で隣の救護室からナンネの微かな寝息が聞こえるのを確認した。
ダリアからは見えないが、部屋ではベッドに眠るナンネと、そばの椅子で寄り添い眠るティト。
「…インキュバスと『サキュバス』が夢の中でひとときを過ごす、なんて…なんだかロマンチックよね。まったく、仲が良いんだから…。ナンネが嬉しそうで本当に良かったわよ。私もあんたが大好きだから…。…異種族、か…私も一度、人間とでも恋に落ちてみたいものね。」
ダリアはそう言って小さく笑う。
そして呟いた。
「ねえナンネ…『サキュバス』はもういいでしょう?良い人が出来たんだしさ…私の店で、働いてみない?…なんて、誘ってもいい…??生きるのも一生懸命なあんたならさ、きっと人種も異種族も関係なくお客さんに好かれて、この店ももっとうまくいくと思うの。…私だってあんたが好き、もう無理をして苦しんでほしくないのよ…?…私、今日こそナンネに言うんだから…」
それぞれの想いをのせ、今日も夜は明けていく…