年上同期から恋人へのロード
語りかける口調は、優しく心地よい低音で、みんながうっとりするくらいの笑顔、絵になる男性だ。私以外には・・・
「寂しいけど、お仕事だからね。毎日電話するし大丈夫!」
笹田さんはえへん!と言わんばかりに腰に手を当て、胸を張った。
藤堂さんは笹田さんの彼氏で、営業部で秋月くんの先輩である。

秋月くんが清潔感のある爽やかな雰囲気で、藤堂さんはエレガントな雰囲気を持つ対象的なイケメンだ。藤堂さんは入社以来、秋月くんの面倒を見ている。
2人揃った姿を思い浮かべると、場所がどんなところでも目を引くだろう。

「俺が監視してますからね。悪い虫は追い払いますよ」
「うん、ありがとう」
「誰かと違って、先輩はかわいいこというから、藤堂さんがのろけるのもわかりますよ」
「ちょっと、それ私のことよね」
吉田部長に承認してもらい、現金を手にして戻ってきた私は、秋月くんを睨みつけた。
「おぉーこわっ。では笹田さん、行ってきますね」
「気をつけて」

私が準備したのに、何よ、その態度、とふんっと顔を背けて席に戻ろうとした時、
「あぁ、牧瀬っ」
秋月くんの声に振り向くと、秋月くんがかがんで私の耳元で
「無理聞いてくれてありがとう。何かお土産買ってくる」
と微笑みながら小声で言って、歩いていった。
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