年上同期から恋人へのロード
私は、振り向いて先輩の後ろ姿を見ることができず、赤面した顔を気づかれないよう、マットの片付けを手伝った。

「俺と付き合わない?」
そう言われたのは、栗田先輩が引退後、私が高校2年の秋。

顧問の先生が、大会前に後輩の指導をして欲しいと依頼したことで、一日コーチに来てくれた。
久々に会った先輩は髪が伸びて、大人びた雰囲気に胸が騒がしく、どきどきした。

先輩は以前と変わりなく、笑顔で後輩を指導してくれた。
私は今回、裏方として選手が最高のパフォーマンスができるように、タオルや飲み物を準備したりで、先輩と話しする時間がなく一日が過ぎていった。

『先輩、ありがとうございました』と部員の挨拶が終わり解散したあと、まだ少し後片付けが残っていた私に、先輩が声をかけたのだった。

「えっ?」
今、先輩付き合わないって言った?
聞き間違い?それとも他の人に言った?
そう思って辺りを見ても、今いるのは先輩と私だけだった。
「ふふっ、何きょろきょろしてるの?俺と付き合うの嫌?」
大好きな先輩の突然の告白。
みんなの憧れで、先輩に恋する可愛い女の子がたくさんいる中で、よりによって何で私なんだろう・・・

「せ、先輩、からかわないでください!冗談ですよね」
「こんなこと冗談で言うと思うの?」
呼吸ができないくらいびっくりして、先輩の目をまともに見れなかった。
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