年上同期から恋人へのロード
溢れかえる人だかりに圧倒されながらも、栗田先輩の姿を探した。

どうか先輩に会わせてください・・・

露天がたくさん並ぶ中、先輩は一際目立つ執事の姿で接客をしていた。
昔見た先輩の笑顔そのままだったけど、大人びた姿にどきっとした。

通り過ぎる女性がみんな一度は先輩を見る。そんな人が彼氏なんだ・・・
「先輩、大好きです」

改めてそう思って、びっくりさせようと近づこうとした時、栗色のロングヘアを毛先だけカールさせた可愛い女性が先輩の腕を引いて、先輩を連れだしていった。

もやっとした気持ちと共に、足が自然と2人を追いかけていった。

露天の裏手は人も少なく、2人を見失ったが、「駿・・・」という声が聞こえた。声の方向へ振り向いたら、そこにはさっきの女性と栗田先輩が、校舎の隙間で深い口づけをしながら、抱きしめ合っていた。

私は目の前に起こっていることが信じられなく、力が抜けて飲み物が入った袋を落としてしまった。
「ガサっ!」
その音が聞こえて、先輩が彼女から離れてこっちを向き、目が合った。
「えっ?・・・牧瀬?」
私は声を出すこともできず、2人の顔をじっと見たまま後ずさりすると、先輩がこっちに向かおうとしているのが見えた。
「誰?」
一緒に居た女性が先輩の腕を掴んでいる。

私はただ、その場に居たくない気持ちで逃げるように立ち去った。

どれくらい走ったかわからない。
振り向かずに走ったから、先輩が追いかけてきたのかもわからない。
< 9 / 82 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop