凍りついた愛
「嫌なことずっと考えたい?」

「いや、それは・・・・・・」

 正直、爽馬のことを少しも考えたくない。

「・・・・・・忘れたい」

「だったら、俺のことだけ考えて」

 指で顎を持ち上げられ、再び唇を塞がれ、目を閉じた。

 徐々に後ろへと追いやられて、足にベッドが当たった。

 バランスを崩してベッドに倒れると、紫苑が上に覆い被さってきた。

 キスを繰り返されて、頭がぼんやりとしてきた。

 なずながつけているペンダントが紫苑の指に引っかかったので、それを彼は外した。

 外された瞬間、爽馬を思い出した。

 浮気されて怒りはまだあるのに、爽馬のことが頭から離れない。

 忘れようとすればするほど、爽馬のことばかり考えてしまう。

 全身に力を入れていると、肩に手を置いていた紫苑の手が離れたので目を開けた。

「・・・・・・無理なんだろ?」

「何を・・・・・・」

「恋人のこと、考えている」

 何も言えずにいるなずなを見て、紫苑はそっと離れた。
< 10 / 13 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop