凍りついた愛
「やっぱり駄目なんだ、これ以上俺と・・・・・・」

「紫苑さん?」

 その声はとても小さく、聞こえなかった。

「・・・・・・帰るんだ」

 その声はさっきと違って、はっきりとしていた。

「本当は会いたいんだろ? 恋人に」

「でも・・・・・・」

 今更会ってもどうしようもないことを言うと、彼は首を横に振った。

「まだ遅くない、大丈夫だ」

 俯いていると、紫苑はなずなの頭に手を置いた。

 顔を上げると、少し悲しそうな顔になっていて、そのままドアの前まで歩いて行った。

「じゃあな。なずな」

「紫苑さん・・・・・・」

 名前を呼んで振り返ると、ドアを閉められた。

 ドアの向こうにいる紫苑を呼んでも、もう開かれることはなかった。

 重い足を引きずりながら、爽馬のところへ戻って行った。

 カードキーでドアを開けて部屋に入ると、爽馬は眠っている。

 ベッドに足を引っかけて転びそうになったとき、その音と悲鳴で爽馬は目を開けた。

「・・・・・・なずな?」

「あっ・・・・・・」
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