凍りついた愛
 急にドアが開いたので、危うく激突するところだった。

 今度は部屋の中にいる男性に文句を言い出したので、中年男性を止めようとした。

 すると、中年男性は顔色を変えて、逃げるようにエレベーターに向かって走って行った。

「ったく、何なんだよ・・・・・・」

 そのままドアを閉めようとしたので、咄嗟に両手で押さえた。

「おい、あんた何して・・・・・・」

 中にいる男性は訝しげに見てきた。

「落し物を届けに来たんです!」

「落し物って何の・・・・・・」

「これです」

 スマートフォンとカードキーを見せると、彼は僅かに目を見開いた。

「これ、同室の方のものですよね?」

「あぁ」

 その返事を聞いて、なずなは一安心した。

「その方に渡してください」

 彼が手を伸ばしたかと思うと、手首を掴まれて部屋の中へ引っ張られた。

 悲鳴とドアを閉める音が同時で、なずなのことを気にせず、どんどん奥へ突き進んだ。

 なずなを椅子に座らせると、彼も椅子に座った。
< 7 / 13 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop