田舎猫と都会猫、のはなし。

スタッフはみんな
僕と同じ色の服を着ていた。

僕は、ただひたすら
奥のキッチンに運ばれてくる
灰皿やグラスを
丹念に洗っていた。

キッチンにはシェフがいて、料理を忙しく作っている。
向こう側ではバーテンダーが
カクテルを作っている。
僕はその片隅で隠れるように
皿洗いをしていた。

体は疲れていたけど、
冷めやらぬ高揚感と
遠くに見える都会猫の姿に励まされ
冷たい手も気持ちよく感じた。

「はい、これもお願いするよ。」
都会猫が皿を運んできた。
そして耳打ちする。

「がんばれ」

もうそれだけで
ぞくぞくする…
頑張ろう…
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