一番好きなのは、キミだから
真宙くんが前にあたしに言いかけていた、『な』から始まる、真宙くんの好きな子の名前。
今日の彼らの主役の "ナオ" も、それに当てはまる。
「七星ちゃん! この5号の、チョコレートのホールケーキをひとつください」
「は、はいっ!」
いけない。今は、仕事中なんだ。
だから、目の前のふたりのことは気にしないようにしないと。
余計なことは、考えないようにしなくちゃ。
「チョコレートのプレートに、メッセージを書くことができますが。いかがいたしましょう?」
「スミくん。このハート型のホワイトチョコ、可愛くない? これに書いてもらおうよ」
長方形やハート型といった、メッセージプレートの見本を見て、中条さんがはしゃぐ。
「それじゃあ、ハート型のこれに。
【Happy Birthday ナオ】って
書いてもらえるかな?」
「わかりました」
あたしはチョコペンを手にすると、真宙くんに言われたとおりに書いていく。