一番好きなのは、キミだから



真宙くんとふたりで帰るのは、4月の始業式の日に、真宙くんの妹の奈紗ちゃんへのプレゼントを一緒に買いに行って以来だ。


あの頃と比べると、真宙くんとの距離は少しは近づけているのかな? と思うけれど。


ふたりきりの下校は久しぶりなこともあり、ちょっと緊張してきた。


下駄箱で上履きからローファーに履き替えて外に出ると、空は灰色の分厚い雲に覆われていた。


「うわ、雨降りそうな空だな。七星ちゃん、雨が降ってこないうちに早く帰ろう」


そう言うと、真宙くんは少し早足で歩き始める。


え、ちょっと待って。


真宙くん、歩くの早いよ。


あまりの足の早さに、簡単には追いつけそうもない。


「真宙くん、待って」


真宙くんに追いつきたくて、あたしが走り出そうとしたそのとき。


「……きゃっ」


「えっ、七星ちゃ……」



< 141 / 248 >

この作品をシェア

pagetop