一番好きなのは、キミだから
「まっ、真宙くん。あの……」
「あっごめん。俺……」
パッと解かれた腕から、あたしは慌てて身体を離す。
突然真宙くんに抱きしめられて、びっくりした。
まだ心臓が、苦しいくらいにドキドキしている。
先ほどまで真宙くんに触れられていたところが、なんだか少し熱いような気がする。
「七星ちゃん。行こうか」
「うっ、うん」
真宙くんに返事をし、ゆっくりと歩き始めたとき。
鼻先にポツっと、冷たいものがあたった。
……え?
空を見上げた瞬間、ザーッと打ちつけるような強い雨が降ってきた。
「やべぇ。もう降ってきた。七星ちゃん、走るよ」
すぐさま真宙くんに手を引かれ、あたしたちは近くの公園の屋根のあるベンチのところまで走る。
「今日の天気予報で、雨降るって言ってなかったから。俺傘持ってきてないや」
「あたしも」
せめて、折り畳み傘だけでも持ってきてたら良かったなぁ。
あたしは、どんよりとした空を見つめる。
ザーザーと降りしきる雨は、すぐにはやみそうにない。
「夕立ちかな? 七星ちゃん、しばらくここにいようか?」
傘を持っていなかったあたしたちは、ひとまずここで雨宿りすることにした。