一番好きなのは、キミだから



「ねぇ。あたしのことばかり、気にしてくれなくて大丈夫だよ? 真宙くんも、拭かないと」


あたしは、自分のスクールバッグからハンカチを取り出し、真宙くんの髪の毛を拭こうと手を伸ばす。


「えっ、もしかして七星ちゃん。俺の頭、拭いてくれるの?」

「うん。さっきの……お返しに」

「ほんと? 嬉しいなぁ」


真宙くんが、あたしの前で屈んでくれる。


「それじゃあ、お言葉に甘えてお願いしようかな」

「うっ、うん」


あたしは、真宙くんの髪をそっとハンカチで拭く。


いつも無造作に整えられている明るい茶髪は、濡れたからかストレートになっていて。


真宙くんの閉じた目元のまつ毛は、こちらが羨ましくなるほど長い。


鼻筋も通っていて。肌も色白でキメ細やか。


ほんとにきれいな顔をしているなぁ、真宙くん。


ずっとこうして、近くで見ていたいくらいだよ。



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