一番好きなのは、キミだから



真宙くん……。


彼の心遣いが、とても嬉しい。


「ありがとう」


あたしは、真宙くんのカーディガンに袖を通す。


男物のカーディガンは、あたしには大きくて、ぶかぶか。

袖も長くて、指先まですっぽり隠れてしまうけど。


着させてもらったそれは、微かに真宙くんの匂いがして。


後ろから真宙くんが、あたしを優しく包み込んでくれているみたいに思えた。



「……くしゅっ」


隣で真宙くんが、小さなくしゃみをした。


えっ。くしゃみしてるところ、初めて見たけど。好きな人のそんな姿さえ、なんだか可愛く思えてしまう。


ていうか、やっぱり真宙くんも寒いんじゃ……?


「ねぇ、真宙くん……寒い? このカーディガン、返そうか?」


「ううん、返してくれなくて良いよ。俺は……こうするから平気」



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