一番好きなのは、キミだから



好きな人の突然の接近に、心臓のバクバクは激しくなる一方だ。


なに? 何なの、真宙くん……。


胸のドキドキが頂点に達しそうになったあたしが、思わず目を閉じると。


すっと長い指に、口の端を拭われる感触がした。


「……え?」


「ごめん、急に。唇の端にスコーンの粉がついてたから」


「あっ、ありがとう」


なんだ。口にスコーンの粉がついてたんだ。


いやだな、あたしったら。


この前の雨の日に公園で、真宙くんに後ろから抱きしめられたり、鼻先にキスされたから。


なんか変にドキドキしてしまった。


「どうしたの? 七星ちゃん、顔真っ赤だよ」

「えっ!」


「もしかして、何かよからぬことでも想像しちゃった?」


唇の端を上げた真宙くんに、わざとらしく顔の距離を縮められ、頬に熱が集まる。


「もうっ! 真宙くんの意地悪!」


この前の雨宿りで意識していたのは、やっぱりあたしだけだったのかな?


「はははっ。そういうところも、ほんと可愛い……好きだなぁ」



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