一番好きなのは、キミだから



……え?


うそ。今……真宙くんが、雪乃ちゃんのことを『好き』って言った!?


ていうか今日は、雪乃ちゃんが真宙くんに告白するんじゃなかったの!?


なんで!? と疑問に思いながらも、目の前の光景に釘付けになってしまうあたし。


「だから……俺と……つ、付き合ってくださいっ!」


真宙くんが雪乃ちゃんに叫ぶように言い、頭を下げた。


「……っ」


雪乃ちゃんと真宙くんが……両想い。


前に言ってた、真宙くんの『な』から始まる名前の好きな人って……やっぱり中条さん。


雪乃ちゃん、だったんだ。


以前真宙くんに『特別な存在』って言ってもらったことがあったけど……好きな人があたしっていう意味じゃなかったんだな。


そっか。そうだったんだ。


雪乃ちゃん……真宙くんと両想いになれたんだね。


「良かっ……た」


友達の数年間の片想いが成就して、良かったと思うのに。


すごく、喜ばしいことなのに。


徐々に視界が滲んできたあたしは、急いでその場から駆け出した。



< 168 / 248 >

この作品をシェア

pagetop