一番好きなのは、キミだから
「……ううん。真宙くんは、何も……してないよ」
あたしは、前を向いたまま答える。
「だったら、どうして? 今だって、俺のほう全然見てくれないし」
あたしの手首を掴む真宙くんの手に、わずかに力が入る。
「それに七星ちゃん、最近なんだか元気ないから。もしかして、何かあった? 俺で良かったら、話でも何でも聞くよ? だって俺ら……友達だろ?」
『友達』
そんなふうに、普通にさらっと。
当然のように言ってくれるなんて、嬉しい。
それに真宙くん。あたしのことを心配してくれて、本当に優しい。
だけど……。
「真宙くんには……言えない」
真宙くんに彼女ができたことが関係しているだなんて、そんなこと本人には絶対に言えないよ。
雪乃ちゃんと付き合い始めて、幸せいっぱいの真宙くんを困らせることなんてできない。
「どうして? 俺じゃ、何か七星ちゃんの力にはなれない?」
本当は思ってることを全部、吐き出してしまいたい。だけど……
「ありがとう。でもこれは、あたし自身の問題だから。真宙くんには……関係ない。
ていうかあたし今、真宙くんとは話したくない。あなたとは……関わりたくないの!」
「は……? 俺と関わりたくないって、何だよそれ」