一番好きなのは、キミだから
今、学校からバイト先まで走って来たのも、遅刻しそうだからというのも少しはあるけれど。
本当は、誰かにあとをつけられていたからだ。
「七星ちゃん……大丈夫? なんだか顔色悪いよ?」
制服に着替え終えたあたしがレジの所へ行くと、先輩の莉奈さんが心配そうにあたしの顔を覗き込む。
「大丈夫! あたしは、元気ですよ」
莉奈さんにあたしは、精一杯笑ってみせる。
正直、今気分がとても憂鬱だけど……
ここのケーキ屋さんは基本、いつも少人数のスタッフで回している。
シフトに入っている限り、体調不良でもないんだから、迷惑はかけられない。
「七星ちゃん……もし何かあったら、オーナーや笹木さんに言いなよ?」
「はい。ありがとうございます」
「それじゃあ、お先に。お疲れ様です」
莉奈さんと交替し、お店の販売スタッフはあたし1人になる。
接客や補充のケーキの陳列をしているうちに1時間以上が過ぎ、店内の壁時計に目をやると17時を過ぎていた。
ちょうど、店内のお客様が途切れたとき……。
カランカラン……
「いらっしゃいませー」
お店のドアベルが鳴り、ある1人の男性がお店に入ってきた。