一番好きなのは、キミだから



「こんにちはー」


たった今来店したのは、パーマがかった黒髪で、熊のように大柄の男性客。


名前は、森山(もりやま)さんというらしい。


本人曰く、元々は関西出身で今はこの近くの大学に通っているらしく、最近ここによくケーキを買いに来られる。


「えーっと、今日は何にされますか?」

「ん〜、そうやなぁ……今日は、苺のショートケーキとプリン。あと……」


自分の顎に人差し指を当てながら話す森山さんの声のトーンが落ち……レジ前に立つあたしのほうに顔が近づいてくる。


「……新川ちゃんが欲しいなぁ」


……え。


ニヤニヤ顔の森山さんに突然、そんなことを言われあたしは背筋がゾクリとした。


「やだなぁ、森山さん。そういう冗談は、やめてくださいよ」


「冗談ちゃうよ。新川ちゃん、今日もほんまに可愛いなぁ」


そう。最近、あたしを悩ませているもうひとつのこと。それは……



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