一番好きなのは、キミだから



「なぁ、新川ちゃん。いつになったら、オレとデートしてくれるん?」


関西弁で話すこの男性客・森山さんこそが、真宙くんへの恋以外で現在あたしを悩ませている要因だ。


「あの……お言葉ですが、お客様と個人的にそういうことは……できません」


どうやらあたしは、森山さんに好意を持たれているらしく……最近あたしがバイトに入るたびに、こんなふうに言い寄られている。


「別にええやん、デートの1回くらい……」


すると、お会計用の黒のトレーにケーキ代と共に白の紙切れが置かれる。


「ここにオレの連絡先が書いてあるから。
今度こそ、連絡ちょうだいや」


少し前にも、森山さんにこうして連絡先を渡されたけど。

当然、あたしから連絡なんてするはずもなく。


ここだけの話。連絡先が書かれた紙は、ビリビリに破ってゴミ箱に捨てた。


それにしても、完全に無視したのに……しつこい。


普通は連絡先を渡して、何日か経っても相手から連絡をもらえなかったら……脈ナシって分かるよね?



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