一番好きなのは、キミだから



「あ、レモンパイだ。もうそんな時期なんですね」


毎年6月頃から期間限定で販売される、お店のショーケースの中にあるレモンパイを見た途端、目をキラキラと輝かせる真宙くん。



「そうなの。真宙くん、良ければおひとついかが? ……ねぇ、新川さん。今日は疲れたでしょう? あとは私がやるから。今日はもう帰りなさい」


笹木さんが接客をしながら、こっそりと隣のあたしに耳打ちする。


「え、でも……」


「俺、ここのレモンパイ好きなんですよね。それじゃあ笹木さん、レモンパイを2つください」


「はい、レモンパイ2つね。ほら、新川さん早く!」


「笹木さん、ありがとうございます」


レモンパイを箱に詰める笹木さんのお言葉に甘えて、あたしはバイトを早引きさせてもらうことにした。



──それから、10数分後。


学校の制服に着替えて、あたしがお店の外に出ると……



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