一番好きなのは、キミだから
◇ふたりでレモンパイ
「ねぇ、七星ちゃん。ちょっとあそこのベンチに座ろうか」
" 恋人のフリ " として手を繋いでしばらくふたりで歩いていると、真宙くんが近くにある公園のベンチを指さす。
「うん」
真宙くんとふたり並んで、木製のベンチに腰掛ける。
時刻は18時前だからか、ふと見上げた空はオレンジ色に染まり始めていて
公園もあたしたち以外、他に人はいない。
いつの間にか、後ろをついてきていた森山さんの姿も消えている。
本当に今、真宙くんとふたりきりだ。
さっきからずっと、あたしたちは手を繋いだままで……って!
「だっ、だめだよ真宙くん! あたしとこんなに長い間、手なんか繋いでちゃ……」
森山さんが見ていた手前とは言え、真宙くんには雪乃ちゃんという彼女がいるんだから。
あたしは慌てて、真宙くんと繋いでいる手を離した。