一番好きなのは、キミだから
「なんでってそんなの……七星ちゃんは、俺の彼女だからに決まってんだろ」
『七星ちゃんは、俺の彼女』
真宙くんのストレートな言葉に、あたしの頬には熱が集まる。
照れくさいけど、真宙くんにはっきりと『彼女』って言ってもらえてすごく嬉しい。
今はアルバイト中なので、あたしは頬が緩みそうになるのを必死に堪える。
「だからお前ら、人の彼女のこと誘ってんじゃねぇよ」
真宙くんが、ふたりを睨みつけるように言う。
「マジかよ……密かに好きだった七星ちゃんが、誰かの彼女になるなんて……やべぇ。俺、失恋確定じゃん」
「なぁ、俺もすげーショックなんだけど。でも、新川さんの相手が澄野なら……勝てる気しねぇわ」
東尾くんと山岸くんがそれぞれ呟くと、ふたりは何も買わずにお店のドアのほうへふらふらと歩いて行く。
「あの……ふたりとも、ケーキは買わなくても良かったの?」
あたしは、東尾くんたちに尋ねる。
「ああ。なんか急に体調が悪くなったから、今日は買わずに帰るよ」
「俺も。ごめんね、新川さん。またね」
力なくそう言うと、ふたりはお店を出て行ってしまった。