一番好きなのは、キミだから



えっ。


あたしの胸が、ドキドキと高鳴る。


真宙くん今、あたしのこと『七星』って……。


「ねぇ、真宙くん。今あたしのこと、呼び捨てで呼んだよね?」

「え、そうだったっけ? ごめん、七星ちゃん。つい、無意識で……」


「謝らなくて良いよ。だって真宙くんは、あたしの……かっ、彼氏……なんだからっ」

「七星ちゃん……」


きゃー。あたしったら、真宙くんの前で彼氏って言っちゃった。

本当のことだけど、初めて口にするとなんだか照れる。



「そっ、そう言えば今日は土曜日だから。真宙くんは、いつものケーキを買いに?」


いけない。いい加減おしゃべりはやめて、仕事モードに切り替えなくちゃ。


「あっ、うん。そう。週末に、家族みんなで食べるケーキを買いに来たんだ」

「ご注文はお決まりですか? いつも買われるケーキと、同じ物でよろしいでしょうか?」


今はあくまでお客様と店員として、あたしは真宙くんに敬語で話す。


「ううん。今日は、レモンパイを4つもらおうかな」


ケーキのショーケースを見ていた真宙くんの目が、真っ直ぐあたしを捉えた。


「あと、ケーキだけじゃなくて……七星ちゃんも欲しい」



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