一番好きなのは、キミだから
今やって来たお客さんは、まさにあたしが先ほどからずっと来店を待ちわびていた人。
彼を見た瞬間、あたしの頬は自然と緩んでしまう。
澄野 真宙くん。
あたしと同じ柚ヶ崎高校に通う1年生であり、このお店の常連さんだ。
少なくとも彼は、あたしがここでバイトを始めてからは、週1で定期的に来店してくれている。
そんな真宙くんの言う『いつもの』
それは……。
「苺のショートケーキ2つと、チョコレートケーキとモンブランをそれぞれ1つずつでよろしいでしょうか?」
「うん。それで」
あたしは声に出して真宙くんに確認すると、ケーキが崩れないように注意し、箱詰めしていく。
ふと真宙くんの視線を感じて、そちらに目をやると。
──ドキッ!
彼と、目が合ってしまった。
吸い込まれてしまいそうな、くっきりとした大きな二重の瞳。
「あの……あんまり、じっと見ないでもらえますか? 」
「え? どうして?」
真宙くんが、首を傾げる。
「その……緊張しちゃってやりづらいので……」
あたしが見られて緊張しちゃうのも、真宙くんだから……だけど。
「そっか。俺は、真剣な顔の七星ちゃんが可愛くてつい見てたんだけど……ダメだった?」