ツンデレ魔王様と同居生活はじめます。
「ふーん、最近はしてなかったの?」
「…まあ。ほらバイト始めちゃったし!」
ものの三口くらいでチキンを食べ終えた嵐くんが、今度はビニール袋からおにぎりを取り出した。
暑いのかシャツのそでを両腕めくり上げる。
「りのはおにぎりの具ってなにが好きなの?俺はー、やっぱりシャケ一択て感じなんだけどー」
なんて、嵐くんはおにぎりの具について話し始めたけど、私の頭の中には全然入ってこなかった。だって、
目が釘付けになってしまっていたから。
嵐くんの肘あたりについた、大きな傷に。
「それ…」
「ん?
…あぁー、これね」
私の視線を追った嵐くんが、気まずそうに口角を上げた。
「大したことないよ。古傷、ただの。
高校入学してすぐ手術受けた時のやつ」
「手術って」
「俺さー、小さい頃からずっと野球やってたんだよね。けっこううまかったんだぜ?
でもずっと憧れてたうちの野球部入って、と思ったら速攻肘故障して。
手術したけど、もう二度と前みたいに野球はできないって言われた。
笑えるっしょ?
入部して一ヶ月で退部だぜ?」