ツンデレ魔王様と同居生活はじめます。
はは、と嵐くんはほんとに可笑しそうに笑うけど。
…ぜんぜん笑えない、よ。
こわばった私の顔に気づいたのか、嵐くんは取りなすように
「まっ、別に日常生活には全然影響ないんだけどねー。
部活やめたからこうしてバイトできて、りのにも会えたし?超リア充生活」
いつも通りの軽い口調でそう言った。
知らなかった…
いつも明るくて軽くて元気な嵐くんにそんな過去があったなんて。
嵐くんの高校の野球部は、全国で名を轟かせるくらいの強豪校だったはず。
そんな野球部に入れるってことだけで、きっとすごいことなのに。
その時の嵐くんの気持ちを思うと、ぎゅっと胸が痛む。
「ちょいちょーい、何でりのがそんな辛そうな顔してんの?うける、全然関係ないじゃん」
「…嵐くんは、すごいね」
「はぁ?」
「そんな辛いことがあっても今、毎日笑って生きてる。それってすごく、すごいことだよ。
嵐くんはすごいし、強いね」
…だって私は
こうして笑えるようになるまでにすごく時間がかかったから。
お母さんが死んだとき、ずっと笑えなかったから。