ツンデレ魔王様と同居生活はじめます。
「…いや」
嵐くんは力なく首を横に振った。
「落としたら連絡ほしいってメアド聞いたんだけど、昨日、メールしたらエラーになって。たぶんもう、このアドレス使われてないんだと思う」
「じゃあ、その人の顔は見たんだよね?」
「…ごめん、見てない。
帽子を深くかぶってたし、マスクしてたし、男ってことくらいしか…」
「お前」
それまでどうにか黙っていた魔王が折ったボールペンのインクで手を汚しながら言った。
「よくそんな顔も名前も目的もわかんねー奴の言うこと聞こうと思ったな。たかが5万で」
「…ごめん。俺も、あの時はヤケになってて。でも」
「もう2度とコイツに近づくな。バイトも今すぐやめろ。じゃーな」
何か言いかけた嵐くんを遮って席から立ち上がる。
「行くぞ、来い」
「は…はい」
魔王の後に続いてファミレスを出ようとした私を
「待って、りの!」
切羽詰まったような嵐くんの声が追いかけてきた。