ツンデレ魔王様と同居生活はじめます。
呉葉さんは一瞬、大きく目を見開いたけど
すぐにいつものクールな表情に戻って、髪にかかった艶やかな黒髪を払った。
「…あ、そう。で、何でそんな報告をわざわざ私に?」
「…なんとなく。私だけ自分の気持ち言わないのはズルい気がして」
「私だけって。言っとくけど、私は別に暁のことなんて本気じゃないかいから、もともと」
暁だってそう言ってたでしょ?
と右の口角だけを吊り上げる呉葉さん。
「でも…泣いてましたよね、あの夜」
あの夜、魔王と家に帰ったら。
ソファに座っていた呉葉さんはいつもの勝気な様子だったけど、少しだけ目が赤かった。
「…何言ってるの?私が泣く?はっ、バカじゃない?あー、ほんっと不愉快だわ、貴方と話してると!この学校もやっぱり私には会わなかったみたい、元の学校に戻ることにするわ」
「…そうですか。お元気で」
「ええ。じゃあね、もう2度と会うことはないでしょう」
今度こそ呉葉さんが、車に乗り込む。
バタンと、ドアが閉まって。
…だけど車はいっこうに発進する気配がない。
不思議に思っていると、呉葉さんの乗っている座席の窓が、スッと開いた。