あなたは運命の人
門を開けてもらうと憂鬱な気持ちで歩く。
だって桐人君とは結婚しませんと言いに行くんだもの。

だって私、桐人君が大好きなんだもん……


「まさかこんなにも上手くいくとはねー!」

そこにお母さんの元気そうな声が聞こえてきた。
私は辺りを見渡す。

「本当にね!」

近くからもう一つの声が返事をした。
これは桐人君のおばさんの声だ。

うちの庭には、花と木に囲われたところにテーブルとチェアが置いてある。
今の時期はシクラメンやパンジー、ビオラでいっぱいだ。
どうやら二人は外でお茶をしているようだ。

私はそちらに向かっていく。

「長かったわー!」

「本当にねー!」

楽しそうに話すお母さんとおばさんの声がどんどん大きくなっていく。

何が長かったのだろう。
何の話をしているのだろうと疑問符を浮かべていた時だった。


「死んじゃうって嘘ついた甲斐あったわ!」


お母さんの楽し気な声に足が止まった。
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