あなたは運命の人
美優の熱のことがあったから、今週は早めに来て十七時には帰らせてもらっていた。
家に持ち帰って出来る仕事ばかりの職場で、こういう時には助かる。
今日早めに来ておいて良かった。




「桐人、今日も早く帰るの?」

十七時、苛々を堪えながら仕事をこなし、帰り支度をしていたところで青柳に声を掛けられた。

「あぁ。月曜日に話しただろ。まだ彼女が体調を崩しているんだ」

今日は別の理由で早く帰りたいんだけどな。
鞄に荷物を詰めながら返すと、突然俺の腕に勝手に触れてきた。

「ねぇ、私達やり直さない?」

「は?」

鞄から思わず青柳の顔を見る。

俺は個室に居るわけじゃない。
三メートル先には仕事をしている社員がいる。

こんな所で話すことじゃないし、俺は話す気もない。

もう怒る気にもなれない。

腕に絡み付いた青柳の手を払う。

「俺は彼女と結婚する。お疲れ」
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