あなたは運命の人
すると桐人君が私の身体を反転させ、腰を屈めて私の両肩に手を置くと真正面から私の顔を覗き込んだ。
突然目が合ったことに鼓動が跳ねて、私はバッと目を横に背けた。

「確かに付き合ったことはある。でも付き合ったのは高三の時、君に婚約解消されたショックから」

ショック？

「え？」

私は驚きすぎて逃げていた目を桐人君に戻すと再び視線が絡む。
桐人君は一瞬目尻を緩めると、真剣な顔に戻した。

「彼女とは高校を卒業してすぐに別れた。アイツが美優に何を言ったかは知らないけど、今は職場の同僚。アイツは俺に興味がまだあるみたいだけど、俺には想いは無い」

ちょっと待って、どういうこと？

青柳先輩との話の食い違いに大混乱。

「じゃあ、青柳先輩の話は？桐人君とずっと付き合ってるって……」

「真っ赤な嘘。事実無根」

私の出した言葉を桐人君は真摯な目を私に向けながら全てばっさり否定した。

青柳先輩の話が全部嘘だったなんて。

「美優」

放心しつつも真実を少しずつ理解していく中、優しく名前を呼ばれた。
それだけで胸がきゅんとして苦しくなる。
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