あなたは運命の人

「昼食は何かな?」

「ひゃあ!」

昼食作りに熱中していたら、いつの間にか隣には桐人君。
驚きすぎた私は小さい悲鳴を上げてしまったが、すぐに気を取り直して返した。

「サンドイッチです」

今は茹で卵と塩胡椒とマヨネーズを混ぜ合わせているところ。

「エプロン可愛いね」

「ふぇ!?」

不意に可愛いと言われて、顔が熱くなり、変な声が出てしまった。

「奥さんみたい」

桐人君の微笑む顔が眩すぎて、自分を落ち着かせようと顔を逸らした。

「そ、そりゃあフリをしてますから!」

昼食作りを再開させれば気が紛れるだろうとスプーンで茹で卵を掬い、味見をしようとした。

「それ、味見させて?」

「え?」

突然桐人君が私の右手のスプーンを指差した。
キョトンと返すと桐人君の顔が少し不機嫌になった気がした。

「各務にもやってたじゃん」

突然出てきた諒ちゃんに焦る。
だって諒ちゃんが居たあの日は不穏すぎたから。
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