あなたは運命の人
離れたいが抵抗する力も無いし、足元もフラフラするし、熱のせいで眩暈が襲ってきて、私は桐人君に体重を預けさせてもらうことにした。


「そうやっていつも甘えてよ」

「え?」

桐人君の胸に預けていた頭を上げると、桐人君の表情は更に柔らかさを増していた。
私の心臓はその顔に煩いほど暴れて、私はそれを隠すために俯いた。

桐人君がホテルの精算をしてくれている横で私は彼に凭れながらモヤモヤと思考を巡らせていた。


前の過呼吸はキスに入れていない。

そうなると私のキスは先程が初めてだ。

なんだったの、あのキス。

いや、ちょっと待って。

あれはそもそもキスだったの?

ただ偶然ぶつかっただけとか?

恋愛経験値が底辺な私には分からない。

それに桐人君が何も言ってくれないから分からない。

熱のせいで益々分からない。
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