今日からはじまる恋の話
「性の対象として男は女。女は男。それが一般的な考え方だから鈴村の感情は間違ってないよ。昔と違って差別は減ってきたと思うけど、それでも受け入れてない人のほうが圧倒的に多いから仕方ないことだよ」
おそらく零士は否定的な反応に馴れている。だからこそ自分が悪いわけではないのに〝ごめん〟という言葉をたくさん使ってきたんだろう。
今まで俺の周りにLGBTの人がいなくても、隠していただけで、言えなかっただけで、本当は身近にいたこともあったのではないかと思った。
「多分俺、お前に対して無神経なこと言いすぎてたよな。本当に悪い」
「別に無神経だなんて思ったことないよ」
「まだ動揺はしてるけど、零士のこと否定してるわけじゃないし、偏見だって持ちたくない。零士は零士だから俺はなんにも変わんない。変わるつもりとかねーからな」
言葉足らずすぎて、どこまで伝わっているかわからない。零士は目を丸くさせたあと、なぜかクスリと笑みを溢した。
「鈴村って、思ったことはなんでも言うよね」
「そうだ。悪いか?」
「ううん。鈴村に話してよかったと思って。鈴村なら信用できる。これからもよろしく」
零士は自己紹介のように手を差し出してきた。
知り合って3年目だというのに、初めて宇津見零士という人間に触れられたような気がした。
ただの握手なのに緊張して、信用できると言ってもらえたことが心の底から嬉しかった。