今日からはじまる恋の話
「俺も見せたんだから、お前のも見せろ」
「え、口の中を? やだよ」
「いいから早く!」
「わっ、ちょっ……」
肩を勢いよく押さえられた反動で俺の体はソファに沈んだ。奥行きがある四人がけのソファは、俺たちが同時に倒れられるスペースが十分にある。
気づけば鈴村の顔が俺の上にあった。
お互いの息づかいがわかるほど近く、鈴村の重みも体を通して感じる。
目が合って3秒ほどふたりにして固まった。
「……わ、悪い」
「べ、別に平気だけど……」
体勢を元に戻して離れても、リビングには変な空気が流れていた。
こんな時、いつもみたいにおちゃらけてくれたらいいのに、鈴村のほうが黙っている。それに耐えられずに、俺はソファから腰を上げた。
「シャ、シャワーでも浴びてこようかな」
いちいち言わなくてもいいようなことを大声で宣言して、そのまま風呂場に向かった。
すぐにレバーを下げると、高い位置に置かれているシャワーヘッドから水から出てきた。
痛いくらいの水圧。温度はぬるめの38度。
立ったままシャワーを浴び続けているのに、体にこもってる熱が引いていかない。
心臓が壊れたみたいにうるさかった。
ただ驚いただけ。こういうアクシデントに慣れてないだけ。
そうやって必死に言い聞かせている自分がいた。