今日からはじまる恋の話


「零士のこと好きになったの?」

洗い物の手を休めることなく、和久井さんが聞いてきた。

「す、好きって恋愛としてって意味ですよね?」

「当たり前だろ。じゃなかったらわざわざ聞かないよ」

「……正直、わかんないっす。っていうか俺って今までどうやって好きな人のことを好きだって認識してきたと思います?」 

「いや、そんなの知らんけど」

今まで恋愛は直感だった。

顔がタイプだったら、性格が良さそうだったら、彼女がほしいと思った時に告白をされれば、躊躇なく付き合ってきた。

「つまり陽汰は零士のことを見てしまう理由がなんなのか知りたいってことだろ?」

「はい。そうです」

「だったら手っ取り早くハグしてみるのが一番だろ。友達だったらそのまま終わる。でも好きなやつだったら、ハグだけじゃ足りないって思うはずだろ?」

「なるほど。でもあいつ絶対俺とハグなんてしないっすよ」

「バルに顔を出してる時は挨拶がわりにすることもあるって言ってたよ。多様性を大切にしてる人は外国のコミュニケーションを見習ってるからなんだってさ」

ということはあいつにとってハグは挨拶と同じってことか。

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