今日からはじまる恋の話
「陽汰くんの夢はなに?」
「俺の夢は零士を幸せにすることです」
陽汰くんにはなんの迷いもない。
私は零士くんに幸せになってほしいと願っていた。
お互いにこれから長い人生を生きていかなきゃいけなくて、その間に挫折も成功も経験して、いつかおばあちゃんとおじいちゃんになった時に、ふたりで絵本の街で暮らしたい。
私の夢はなにも変わっていないけれど、零士くんの今の夢は違うかもしれない。
私だってそう。夢は形を変えていくものだ。
それでも私と零士くんの関係だけは変わらないものであってほしいと思う。
「絶対に零士くんのこと幸せにしなさいよ」
「任せてください!」
「私も負けずに幸せになるからね! っていうか今も最高に幸せだけど」
「はは、俺もっす」
空に浮かんでいる満月が、私たちのシルエットを映し出している。
陽汰くんの背中では零士くんが子供みたいな顔をして眠っていた。
運命の人に出逢うと林檎の匂いがする。
それは誰が考えたかわからない話。
今日もどこかで、幸せを探してる人がいる――。