やっぱり幼馴染がいいと彼氏に振られたら、彼のライバルと恋人の振りをする事になりました

「母さんがな……」
 父の深い溜息が電話越しに聞こえる。
「泣いてたぞ、お前がずっと家事を放棄した家を見て……汚れた家を片付けながら、泣きながら電話してきたんだ」

 その言葉に驚きを隠せない。
「えっ、お母さん、家に来たの?」
「お前に言ったら隠されるかもしれないと、連絡せずに行ったんだ。きっと杞憂だと笑って発っていったのに……」

 ──あ、あれを見たのか……

 最近汚れ過ぎて、大嫌いなあの黒い虫も何匹か発生してるくらい酷いのに……
 自分でもショックだったのだ、綺麗好きの母は放心したかもしれない。

「仕事は、どうしても辞めたく無いなら休職願いを申請してみなさい。とにかくお前は帰ってくるんだ。これ以上は危なっかしくて一人暮らしなんてさせておけん」
 断固と告げる父の揺るぎない声に私は項垂れた。
「でも、河村さんが……」
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