やっぱり幼馴染がいいと彼氏に振られたら、彼のライバルと恋人の振りをする事になりました
私は出来るだけ明るく言った。
「嘘をつき続けるの、もう疲れちゃった。ごめんなさい。でも、もう十分河村君の要望に応えたと思うの。私は当分誰とも付き合うつもりは無いし、名前だけは好きに使ってくれていいから──」
「それは今まで俺に無理に付き合ってくれてたって事?」
被せるように口にする河村君は本当に傷ついたような顔をしていた。
違うんだよ。
友達だと思ってたから、一緒にいて楽しかったのに。
恋心を自覚したら、友達っていう壁は高い。だって──
友達だから、頼んだんでしょう? 何とも思わないから出来たんじゃないのかな? 恋人役を……
「うん……」
だったらせめてその信頼は、壊したく無い。
私は顔を俯けて、短く、けれどはっきりと意思表示をした。
途端に河村君の手からするりと力が抜けて、私の手は自由になる。
行き場の無い視線を彷徨わせ、私は仕事に戻ると、もごもごと口にして、急いで踵を返した。