やっぱり幼馴染がいいと彼氏に振られたら、彼のライバルと恋人の振りをする事になりました
「三上さん!」
笑顔で手を振る河村君には、そろそろ遠慮して貰いたい。
何とか口元だけは笑みを浮かべているものの、私の目は既に死んでいる。
(そういえばこの人、こんな人だったかも……)
どちらかというと物静かな智樹とは違って、能動的というか、物怖じしない人だったなあ……
私は人見知りする方だったから、分け隔てない変わらないこんな態度を、ありがたいと思った時も、そういえばあったっけ。
元カレの事もあって忘れる努力をした人だったけど……
「お疲れ様です」
──とはいえ今は仕事中。
気持ちは切り替えていきましょう。
両手に抱えた書類に力を込め、会釈を返し書庫へ向かう。
踵を返すタイミングでちらりと視線を送れば、嬉しそうな美夏が目に留まった。
(美夏は研修担当だったのね)
この研修では新人同士で教え合わせる。
教える側のアウトプット目的と、新しい視点……初期の頃に抱いた感想をぶつけられ、どう回答を導き出すかが課題となっている。
これは、ベテラン社員を研修に参加させると、仕事のクオリティが下がるから。と苦情があった為らしい。
(まあお陰で二人に接点が出来たわけだし、一緒にいる時間が増えれば勝手にアプローチするでしょう……けど。ああ、嫌だなあ……)
私の中で、元カレを彷彿とさせるのに、河村君なんて最悪な人材だった。