やっぱり幼馴染がいいと彼氏に振られたら、彼のライバルと恋人の振りをする事になりました

 そうして私たちは両家に挨拶が済んで……

「これで正式な婚約者だね」

 嬉しそうに笑う河村君に、熱くなる頬を誤魔化しながら急いで頭を下げた。
「これから、よろしくお願いします」
「うん、こちらこそよろしく」
 河村君も丁寧に礼を返す。

「それであの……お願いがあるんだけど……」
「え? 何?」

 どこか申し訳無さそうに口籠る河村君に首を傾げれば、何故か赤らめた顔を隠して視線を逸らす。
「名前で呼んで?」
「え」

 ぽつりと呟くように告げられても、低く聞き取りやすい声は耳に届いた。
「な、名前で呼んで欲しい……雪子」
 河村君の言う意味を理解して、かあっと顔に熱を持ち、喉の奥で声が詰まる。
「た、貴……也」
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