やっぱり幼馴染がいいと彼氏に振られたら、彼のライバルと恋人の振りをする事になりました

 もごもごと口を動かしてやっと言葉にすれば、何とも気恥ずかしくて堪らない。
(苗字呼びが、長かったからっ!)
 智樹の事はずっと名前で呼んでたのに。
 そういえば、あっちはもう馴れ馴れしく呼ぶ事は控えるようにしないと。

 冷静になる為にどうでもいい事に思考を巡らせていると、河村君は少し難しい顔でこちらを覗き込む。
「あと、これからは俺だけ見て……欲しい」

 ひくりと、一瞬身体が引き攣れたように強張ったように感じた。けれどその言葉が身体に浸透すれば、どっ、と何かが一気に決壊したような……そんな感覚が全身を駆け巡り、今度は固まってしまう。
 上手く身体を動かせない私にはこくこくと頷く事しか出来なくて。
「うん、勿論」
 やっと返事をする始末。
 だって、多分、河村君は初めて私を見てくれた人なのだ。
< 178 / 194 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop